農と食に関わる食糧廃棄問題の現状。私たちにできることは何か。
目次
食糧廃棄問題について
レンタル農園や市民農園で農業体験をする中で、野菜づくりや野菜の収穫について考える時、農と食に関わる食糧廃棄問題にも目を向けてほしいなと考えています。
自給農業をするうえで、食糧廃棄問題は規模の大きすぎる話に聞こえるかもしれませんが、食糧廃棄物の多くは、日々の生活から発生するものがほとんどです。
自分で食をつくる体験をするからこそ、知っておきたい現実があります。
日本の現状
なかでも日本は、食糧廃棄大国と呼ばれるほど、食糧廃棄量が多い国と言われています。
国内での年間食糧廃棄量は、食糧消費全体の3割にあたる約2800万トンだと言われています。言葉を聞いたことがあるかもしれませんが「食品ロス」と呼ばれる食べ残しや売れ残りのような”まだ食べられる食品”の廃棄量は年間約621万トン。
「食品ロス」の廃棄量は、世界の食糧援助量の2倍に相当すると言われています。
悲しい現実も
スーパーマーケットといった食糧品を販売する店では、売り残しが出ないように閉店間際に割引シールを貼って販売しているところも多々あります。
正直な話、値引きをする時点でスーパーの利益は減ってしまいます。値引きのために用意するシールや、それを貼って販売する人件費のコストを考えると、売れ残ったら処分してしまったほうが安上がりだと考えてしまう現実もあります。
また消費者側である私達が「食品ロス」を引き起こしていることもあります。
例えば「賞味期限」「消費期限」の違いを理解しておらず、品質上味は劣るがまだ食べられる状態の「賞味期限」切れの食品を捨ててしまったり。
例えばお弁当や食べ物のパッケージの僅かな汚れや中身が片側によってしまっているといった見た目で購入せず、売れ残りが生じてしまったり。
世界での取り組み
そんな食糧廃棄問題において、世界各国ではいち早く対策が行なわれています。中でも私が興味深いと思ったフランスとデンマークの取り組みについてご紹介します。
フランスでは、スーパーマーケットなどで売れ残ってしまった商品の廃棄を禁止する法律ができました。法律で禁止するというところに、食糧廃棄問題への本気度を感じとることができますね。
これにより廃棄予定だった食品は、品質に問題がない場合には、生活困窮者などに配給されるシステム・フードバンクなどの機関へ送られ、食糧を必要とする人に配られます。人が食すには品質上問題がある場合には、畜産動物の飼料として活用されます。
デンマークでは、廃棄予定だった食材を利用したレストランが開業しています。”ゴミ”レストランと銘打っているものの、実際には形が悪いだけで売りに出せない野菜や、「賞味期限」の切れた食品を利用しているレストランです。
届く”ゴミ”の内容によってメニューが代わるとのことですが、おかわりもお持ち帰りも自由なこのレストランは、食事を楽しんでもらいながらも、食糧廃棄問題に関心をもってもらおうと工夫しているのです。
EU全体で食糧廃棄問題に対する意識が高まっていて、2020年までに現在の廃棄量の半分を目指しているとのこと。
食糧廃棄大国と呼ばれる日本は、この世界の動きをどう見ているのでしょうか。
プチ農業をする私達にできること
もちろん今の日本には、農や食以外にも問題や課題が山積みで、ひとつひとつ丁寧に解決していくのは大変なのだと思います。とはいえ、このまま無視していいとは言えないのが食糧廃棄問題。世界の動きに着いていけないのも何だか切ない。
そこでいち消費者であり、農と食に関心を持ったプチ農業体験者である私達にもできることがないか調べてみました。
野菜を無駄なく使う
レンタル農園や市民農園を借りての野菜づくり、ベランダ菜園やキッチンを利用した野菜づくりをおすすめする中で、野菜を無駄なく使うことも食糧廃棄問題への対策として適しているのではないかと考えています。
自分で育てた野菜だからこそ、皮表面についた汚れや、農薬の有無が把握できていることと思います。無農薬で挑戦した野菜であれば、汚れを落とせば皮ごと食べられるのではないでしょうか。
野菜のヘタの部分も、切り取って水に浸けて育てれば、生えてきた葉をもう一度食べることができます。ただ使わないからと処分する前に、有効活用してから処分ができます。
「食べないから」と言う理由で本当は食べられる部位、有効活用できる部分を捨ててしまうのではなく、自分でつくった野菜だからこそ丸ごと食べてしまう。
これもひとつの食糧廃棄問題に対する解決策なのではないでしょうか。
生ごみ堆肥に挑戦する
上記のように野菜を丸ごと食べるといっても、どうしても生ごみが生じてしまうことがあります。ただ生ごみもそのまま”ゴミ”として処分する以外に活用できる方法があります。
それが生ごみ堆肥です。
生ごみは立派な資源であり、自分で野菜づくりに挑戦する自給農業においては便利な道具とも言える存在です。そして生ごみ堆肥づくりが初めてな人でも、つくりかたは決して難しくありません。
段ボールを使った堆肥づくりが簡単です。
- みかん10kg分ほどが入っていた大きめの段ボール箱に、土壌改良剤であるピートモスともみがらくんたんを6:4ほどの割合で混ぜ入れます
- そこへ生ごみを加えよく混ぜる
- 室温が15℃以上の場所にフタをして放置します
- 生ごみを入れてはよく混ぜるを繰り返し、3〜4ヶ月後には黒土も混ぜます
- 1ヶ月寝かせて堆肥の完成
生ごみ堆肥づくりにはこんな利点もあります。
この本を書いた彼女は生ごみ堆肥に挑戦する中で、生ごみから芽が出たことをきっかけに、様々な種を植えて実験するように野菜を育てています。生ごみから直接生えてきた野菜を活用するのも楽しいですよ!
賞味・消費期限への関心を
またプチ農業体験の中ではなく、普段の食料品に対する意識づけでも対策は可能です。
「賞味期限」は品質上期限が設けてあるものの、期限を過ぎても食べることは可能です。実際に期限の切れたものを食べる際には、見た目や香り、味を確認したうえで食べます。
「消費期限」は衛生上期限が設けてあり、足の早い生ものなどに記載されています。こちらは過ぎてしまうと食べることをオススメできないため、出来る限り期限が切れる前に食べなければなりません。
この2つを混同してしまうと、「もったいない」食品ロスが発生することがありますから、食料品の期限が切れてしまってもすぐに捨てるのではなく、どちらの期限か確認したうえで処分するかを決めましょう。
また期限切れの食品を余らせないためにも「買いすぎない」、これも大切です。
農と食への関心を
食糧廃棄問題についてご紹介しましたが、農と食への関心から、このような食にまつわる問題などに注目が集まればいいなと考えています。やはり注目してほしい内容が自分の身近に感じられないと、このような問題はなかなか目が向けられません。
レンタル農園やベランダ菜園に興味のある方は、ぜひ農と食への関心を持ち続けてほしいと思っています。
参考文献
3,食材はゴミ!?〝Less is More〟なコペンハーゲンの未来すぎるレストランを取材してきた
自分で野菜をつくってみませんか? → 手ぶらで行けるサポート付き貸し農園【シェア畑】
<ライター紹介>
kkk0123kkk
いつか自給自足生活を送ってみたいライター。ただし生粋のズボラなため、家庭菜園にまず「ラクさ」を求める。失敗は成功のもとなので、失敗してもあまり気にしない。育てるのが好きな野菜はハーブ、ピーマン、ナス。たくさん収穫できて、比較的虫がつきにくいから。